人生初だからって

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✱稽古は怠らず 茹だるような暑さも、夕方になる頃にはだいぶ和らいでいる。 『長瀬農園』 そう書かれてる軽トラック。 その荷台に積まれるのは、『長瀬』とネームの付いてる防具袋と、『国分』とネームの付いてる防具袋だ。 二人分の防具袋と、同じ様にネーム付いてる 竹刀袋…三本+木刀一組用の物が二つ積まれている。 「ところでさぁ…なんで…お前さぁ 毎年恒例の様に稽古行くのさ」 通り過ぎてく景色。 町の小学校では盆踊りが準備中。 さらに…たくさんの屋台が出ている。 それをうらめしそうに見ながら国分が言う。 「そこで稽古出来るしさ それによ…ミツ兄待ってるし」 慶司は、嬉しそうに口角思いっきり上げる。 剣道にハマった中学生の時から、この時期になると父親の里帰りについて行き、「出稽古」と称して某町道場に稽古に行く。 盆休みのこの時期、平日の夜に普段稽古に行くのが遅くなる大人には大好評のいわゆる合同稽古。 慶司の言う「ミツ兄」とは従兄弟で、父親の姉の息子である。 親族で慶司以外に剣道しているとても貴重な存在だ。 慶司の四つ上で、名を『滝沢光弘』と言う。 長野県の代表として戦った経験のある、地元の強豪校出身でこの従兄弟の存在も慶司の剣道熱に拍車をかけた。 「ミツ兄ねぇ…俺苦手だなぁ」 助手席の窓枠に頬杖ついて国分は、はぁ〜あぁ…と深くため息を着いた。 国分は、ミツ兄が苦手だった。 そうしているうちに、瓦屋根が特徴の建物が見えてきた……。 慶司には天国 国分には地獄 そんな一時間半が始まる。
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