長老と旅の娘

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長老と旅の娘

 その夜のこと…… 「長老様、ありがとうございます。お礼のお話ですが、食事を作らせてはいただけないでしょうか……」 「き、きみが……!?」 「はい……」  彼女が作る食事は、見た目は質素なのにこの世のものとは思えぬほどの美味で、長老はすっかりとりこになってしまいました。  次の日から、彼女は長老の家に住まい、朝晩は食事を作り、昼は農作業を手伝い、まるで嫁のような振る舞いを見せていました。  それを見ていた五平は、少しうらやましく思いましたが、長老に遅い春が訪れたのだろうと、遠くから眺めていました。ところが……  一か月、二か月と時間を追うごとに、長老は日に日に痩せ細っていきました。その横で、オサキは笑みを浮かべています。 (なんか、とんでもねえことが起こるんでねえか!? 長老は大丈夫だべか?)  そう思って五平は長老に大丈夫かと尋ねますが、 「なあに、大丈夫だ!」  そう返すばかりでした。
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