プロローグ

1/1
前へ
/7ページ
次へ

プロローグ

 それははるか昔のこと、とある山のふもとに、どこにでもありそうな小さな村がありました。  その村はとても豊かで平和でしたが、何年かに一度、日照りで大変な水不足になっていました。  そうなるとこの村の長老は、決まって得体の知れないバケモノにいけにえに差し出していました。すると、何故か必ず雨が降るのです。いつしかバケモノは「ヌシ様」と呼ばれていました。  春のある日のこと、今年はまだ雨が少なく、村に一人で住む働き者の五平は、農作業をしながら雲一つ無い空を不安げに空をながめていました。  彼はもともと身寄りも無くさまよっていたところを長老に拾われ、やがてこの村に住むようになり、もう数年が経過していました。その間、村の仕事をよく手伝っていたので、働き者として慕われるまでになっていました。  そこへ、ぼろぼろの身なりをした十五、六歳で一人で旅をしているという娘が現れました。  五平が名を尋ねると、彼女はオサキと名乗りました。そして、か細い声で、 「すみません。京の都にある神社に向かって旅をしているのですが、疲れてしまって……、この村に、一晩泊めていただけるところは無いでしょうか。お礼はしますので」  こう頼まれてしまいました。五平の家には変えの布団も無く、泊めるのは難しいので長老に相談したところ、彼が家に泊めてくれることになりました。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加