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観覧車の時計が二十時を指した。
冬の夜がすっかり横浜を包む。
冷たい陸風が時折髪を撫でる。
観覧車やジェットコースターのある方へ向かって、二人でぴったりくっついて橋を渡っていくと、夜空にオリオン座が見えた。
それから私たちは観覧車に乗った。
少し混んでいたけれど、さほど待つことなく、乗れた。
ゆっくり上昇する二人きりのゴンドラの中で。
私は体を左側の窓に預けて外を眺めてみた。
空と同化して深い群青に包まれた海。
西の空には、弦月が雲間に見え隠れしている。
なぜ、ここにハルがいるのだろう。
さっきからずっと心の隅へと追いやっていた疑問が、脳裏を掠めた。
夢だ、と考えるには、ちょっとリアルすぎる気がして。
さっきのディナーの味も、手袋越しの温もりも。
屈託ないハルの笑顔も。
でも、夢じゃないとしたら、何なの.........?
不安がよぎる。
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