弦月の夜

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「実はついこの前、高校時代に親しくしていた友人が死んだんだ。過労死」 「.........うん」 「僕はこうやって気丈に振舞っちゃいるけど、もう怖くて」 ハルは言い続けた。 「怖いって思う度にエミの顔が浮かぶんだ」 「.........」 「帰ればエミがいる、エミの前なら大好きな写真もいくらでも出来る。だから、生きなきゃ、頑張らなきゃって」 私は黙っていた。 「ねえ、初めて僕ら二人でこの観覧車に乗った日のこと、覚えてる?」 そっと頷いた。 「あの日、サークルのみんなもいたのに定員のせいで二人にさせられてさ」 また、頷いた。 「それでこの場所で告ったよね」 ハルはそう言って、少し黙った。
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