弦月の夜

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そんな、今となっては懐かしくも甘い思い出。 でもそれをハルの口から聞いたのは、やっぱり、初めてではなかった。 「だからさ、今日のデートもどうしてもここに来たかったんだ」 私ははっとした。 今の一言で、はっきり、思い出した。 息を呑んでハルの顔を見つめた。 まさか、まさか。 心音が高鳴る。 ハルもこちらを向いた。 「あのさ、エミ」 「.........うん」 「これからもずっと、僕と一緒にいてくれませんか」 「僕の生きる理由になってくれませんか」 「僕も、エミにとっての理由になるから」 ハルはそう言って、ポケットから箱を取り出して、そっと開けた。 私は、夢見心地に身体が揺らいでいくのを感じた。 頬が紅潮する。 二度目のプロポーズなんて。 「.........私、ハルの生きる理由になってもいいんですか」 高鳴る鼓動を抑えながら、そう聞き返した。 確か、あの時もそう言った気がする。 緊張でカチカチのハルの顔が緩んだ。笑みが零れた。 私は震える手で、それを受け取った。 一週間前に受け取ったはずの、婚約指輪を。
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