弦月の夜

3/21
前へ
/24ページ
次へ
「あれ、」 すっかり涙も涸れて、もう全部済んでしまったあとの朝。 「そういえば、あのチェキは」 私は小さな部屋で一人、机の上の一眼レフを眺めながら、 ふと、あのかけがえのない写真のことを思い出した。 ハルの一眼レフ。壊れてもう動かない。 黒いツヤのあったはずの表面は少し熔けて、ザラザラになっている。 一昨日、SDカードを抜いて確認してみた。 当然、というか、壊れていて、何も読み出せなかった。 見られたとしても、私の写真ばっかりだったんだろうけど。 ハルの写真は、私のスマホの中にはいくつもあった。 でも、後悔にまみれている私は、 かけがえのないあの写真が、 見たくてたまらなかった。 一週間前の、あの日。 横浜で撮ってもらった、二人のツーショットだ。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加