弦月の夜

色々な物でごちゃごちゃしてる部屋中をひっくり返して探した。

落としそうになって、婚約指輪を左薬指から引き抜いて、机の上にあった箱に戻した。

それから、家中の棚やタンスの裏まで探した。

見つからないとは、わかっていたけど。
そうしないではいられなかった。

探してる途中で、時々吐き気に襲われた。目眩も感じた。

何とか自分を支えて、探し続けた。

それでもやっぱり見つかりはしなかった。

日も暮れ初めて、また涙が零れそうになった。

でも、涙は出なかった。

後悔の念が募る。

その思いに、しばらく呆然としていた後で。

横浜に行こうと思った。

特に理由も意味もないけれど、

大切なものを失った私は、どうしても横浜に行こうと思った。

最後に二人でデートした、横浜に行こうと思った。

心の中の伽藍堂をどうにかして埋めたかった。