弦月の夜

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一週間ぶりの桜木町駅は、一週間前と何も変わっていなかった。 ああ、一週間前は、少しだけ雪化粧をしていたかもしれない。 もう、遠い昔の話のようで、よく思い出せないけど。 駅を出ると、ランドマークタワーを左手に、大観覧車を正面の遠くに眺めながら、右手の木陰を目指す。 今の時間は十六時四十五分。 一週間前は、 十六時半には着いてしまっていたような気がする。 一秒ごとに時計を確認して、一秒しか経っていなくて嫌になる。 一分ごとに顔を上げて周りを探し、ハルにどこか似た人が目に入る度にドキッとする。 そんなドギマギを三十分も続けたあの日の私は凄いな。 少し淋しくそんなことを思って、私は木陰の下に佇んだ。 空には群青色が広がり、水色を西の空へと追いやっていく。 だんだんと星も瞬き始め、冬の夜の訪れを知らせる。 月は、まだ、出ていない。
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