弦月の夜

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左を見やると、小さく視界に入るのは、 ランドマークタワーの裾を通る歩道橋に繋がるエスカレーター。 昇りも降りも人波が絶えない。 寒さのせいかな。それとも。ちょっとお腹が痛い、かも。 そっと自分の周りを見回してみると、ある女の子が目に入った。 温かそうなコートを着て、そわそわしながら誰かを待っているよう。 そのうち、待った?と男の子の声が聞こえた。 そんな時期だ。そんな時期だ。素敵な頃だ。 スマホを取り出して時計を見ると、十六時五十九分だった。 ふいに、少し目眩を感じた。
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