ぐしゃら

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 僕はずっと、彼女に憧れてきた。  仲良くなんてなれなくていい。声をかけられなくたっていい。  ただ、あの背筋も凍るような美しく、深い目で冷徹な一瞥を僅かに与えられるだけでいい。  もう一度だけ……  この世界の最果て、いや、この世界の最下層で一度別れたら再び巡り合うのは難しい。大概は「死んでいるか」「殺されているか」の二択になるからだ。  僕は当然、そんな街に生まれた己の運命を呪った。  それは、この街で生まれた者なら誰しも、一度は必ず通る道だ。 産業廃棄物。錆びた鉄鋼。捨て子。捨てられた魔法なんてものまでここにはあった。  ここはこの世界のゴミ溜めだった。
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