第一章

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第一章

 今日の私は、ついていない。  放課後、私は日直という理由で担任の先生から授業の資料のホッチキス留めを一学年分も任されてしまった。クラス委員に頼めば良いものを、なぜ日直に頼むのかという理由について、先生は前の席にいたからと答えた。たったそれだけで決めないで欲しいものだ。私が帰宅部だからといって暇人とは限らないだろう。まあ、帰宅するだけなので一切反論できずに今に至るのだが。  机の上にある数百枚の資料を、淡々とホッチキス留めしていると、まるで自分が永遠と同じことを繰り返す機械か自動人形にでもなった気分だ。全く憂鬱である。  何度目かわからない嘆息を吐くと、ガラッと音を立てて教室の戸が開いた。  反射的に顔を上げると、入室してきた人物を見て、私は目を見開いたまま動きを止めた。相手も同じく、誰もいないと油断していたらしい彼は、私を認識した瞬間その場で固まった。 「鼠谷さん……?」 「破魔くん……?」  前言撤回。今日の私は、とことんついている。
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