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序章
時は江戸。天下泰平の穏やかな世界。
この世は男女のみの性が存在しているはずだった。
しかし、カミというのは意地悪で、男女以外に新たな性別を創り上げた。
階級性別。
至上の一等、平凡の二等、穢れの劣等。一等は階級性別の頂点。この世の長のような存在であり、この世の至上人種。
平凡の二等は、この世に五万と存在する民。
穢れの劣等――とりわけ、劣等の男は両性具有の異質同体。
それゆえに穢れの象徴として忌み嫌われていた。一部では宗教的な観点から陰と陽を兼ねそろえた完全体として崇拝されることがあるが、大体はその異質さから嫌厭されている。
一等の女も同じように両性具有であるにも関わらず、それは一等の尊厳によって暗黙の了解とされていた。よって、劣等の男は特段忌み嫌われる人種だった。それになってしまった者は、死を選ぶものも少なくなかった。
そんな劣等の男が、とある遊廓に生きていた。男は使用人などではない。男でしかも、大層な部屋までもらっていた。
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