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「そちがコーショクですか?」
「へえ、わたくしが言わずと知れた好色で名高いコーショクでございます!」
「態々自分のやらしさを誇張して暴露するでない!早く出来上がった服を見せなさい!」
「へえ、これにてございます。」
勿論、コーショクの差し出した両掌には何もない。
マリー女王は大臣たちが見守る中、内心、大いにうろたえた。
自分は馬鹿なのか?・・・その疑懼の念で心の中が満タンになったマリー女王は、情けなくなり、その心情を隠すのが精一杯で何と言って良いか分からなくなった。
「どうなさいました、女王様、お褒めくださらないのでございますか?」
「あっ、そうでした。すっかり魅了されてしまって言葉が出なかったんです。」とマリー女王は何とか誤魔化した。「まあ、なんて素敵なんでしょう。金の糸を使ったのね、とても輝いてるわ。目も綾な美しさとはこういうドレスのことを言うのね。ねえ、キエラ大臣!」
あっ、ドレスだったのかとキエラ大臣は思い、「左様でございます、いやはや、全く煌びやかな美しい金ぴかなドレスでございますなあ!女王様にぴったりでございます!」と三味線を弾いて褒めそやした。
他の大臣たちも二枚舌を使うなどして口々に綺麗だの麗しいだの女王様にはお似合いの代物だのと褒めたり煽てたり賺したりしてマリー女王をその気にさせた。
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