ガラスの靴

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 ***** 「お二人とも踊りがお上手だな」  エル侯爵の継子である二人姉妹と続けて踊ったが、姉も妹もなかなかの名手である。 「父が私たちに教えてくれましたから」  相手は誇らかに微笑む。  恐らく実父ではなく義父の侯爵の方だ。  一際長い手足でしなやかにこの広間を踊っていた姿が脳裏を過る。  彼本人はもういないのに。 「エルはそなたたちの善き父だったのだな」  父王の呟く声に振り向くと、姉娘の手を取ってターンをするところだった。 「(わし)も踊りでは彼にはとても敵わなかった」  敵わないのは踊りだけではなかった気がするが、王子というか息子としては口に出さないのが優しさだろう。  曲が終わった。 「それでは、また」 「どうもありがとうございました」  娘はずんぐりした不恰好な姿に似合わず優美な仕草で一礼する。  これもエル侯爵の教育の賜物だろう。  彼本人には遠く及ばないが、教えを受けた義理の娘たちの所作には輝かしい欠片がほのみえる。
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