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危険察知
部屋を出た俺が真っ先に向かったのは家から一時間ほどの場所にある街。
この街には、多くの家電量販店が立ち並び、新しい物から古い物まで、ありとあらゆる品物が溢れかえっていた。
一件一件店を回り、品を見て回る。
けれども、全てのジャンルを見るわけではない、俺が見るのはカメラだ。
大きい物から小さな物まで、どんな物があるのか頭に叩き込む。
その中でも、特に目に留まる物についてはメモを取り、家に帰ってネットを使い詳細を調べる。
ある程度全ての店を見て回った後、次に向かうのはレンタルショップ。
この街で一番多くのDVDを取り扱う店に着くと、目もくれず向かったのはアダルトコーナー。
これまた様々なジャンルがあるが、その中でも俺が見るのは盗撮を題材としたDVD。
端から端まで手に取り、気になる物については借りる。
今日は3本ほど手に取り、借りることにした。
そこまでやって、気づくと午後の一時を既に過ぎていた。
腹ごしらえのため、飲食店を探す。
一般的に皆、飲食店を選ぶ基準は何を食べたいか?だが、俺は違った。
俺が飲食店を選ぶ基準は、どこが危ないか?だ。
盗撮は、場所や時間を選ばず、さまざまな所で発生している。
だからこそ、俺はそれを頭に、「ここはこんな危険が」などと考え、少しでも危険な場所があれば、どのようなジャンルの店であろうが、入った。
今日は、薄暗く静かな雰囲気の喫茶店に入る。
外が見える窓に近い席に腰かけると、コーヒーとカレーを頼み辺りを見渡す。
店内には俺の他に客が5人。
老夫婦が一組、30代程のカップルが一組、そして、俺と同い年ぐらいの男が一人。
老夫婦も、カップルも楽し気に会話をしている。
男と言えば、本を片手にコーヒーを飲んでいた。
俺はそれぞれの状況を確認し終えると、テーブルや席の配置も確認する。
〝危険度、Cかな〟
俺は心の中で一人そう思った。
危険度とは、この場所が如何に盗撮の危険があるかの俺なりの基準に基づくものだ。
危険度は、AからEまでの5段階ある。
Aは非常に危険であり、Eは今のところ危険はない、Cは危険寄りではあるが、まだ様子見であると言ったところだ。
結局のところ、以上は場所としての危険度であり、そこに外道がいればどんな場所でも危険であることに変わりはなかった。
だから、俺はいつでも外道の罪を暴く体制を怠る事はしない。
「お待たせしました。さ、召し上がって下さい」
なるべく自然に、だが、しっかりと目を光らせる俺の前に、ヨボヨボとテーブルにコーヒーとカレーを持ってきた老婆がやってきた。
「あ、すみません。ありがとうございます」
コーヒーとカレーが混ざり合った匂いが、俺の腹を鳴らす。
「いただきます」
手を合わせ、スプ―ンに手を伸ばす。
カレーを一口すくい、口に運ぶ。
飲み込んだ後、続けざまにコーヒーを一口。
俺にしては優雅な一時。
店の雰囲気も客層も何となく調べ終わり、会計を済ませようとした時だった。
カランカラン
喫茶店のドアが開く。
ふと見ると、そこには女子大生風の女の子が立っていた。
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