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「ほら動け。船にくらい自分で乗れ」
結局港まで、僕は縛られたまま移動した。
途中警察に声もかけられたけど、シオリが何かを見せたら大人しく引き下がった。ひょっとしたら「ヤバいことに手を出しているんじゃないか」とも思ったが、怖くて聞き出す事が出来ない。大人しく引き摺られるのが一番だ。
「一応聞くけど、本当に『島』に行くんだよね? 」
「当たり前だろ。駆け落ちかと思ったかい? 」
冗談じゃないよ。
「全速力で二時間くらいかな。道は覚えておいて」
「どうやって……僕は海図なんて読めないよ」
「じゃあ覚えろ。必要な時が来るかもしれないだろ」
出来れば一人で往復することが無いことを願いたい。それよりも、僕はこれから行く場所への不安しか感じていなかった。
名前も無い単なる「島」。シオリによれば調査隊の数名が常駐しているらしいが、それだけでは何の安心にもならない。
「大丈夫。生き物はみんないい子だ」
「一応聞くけど、危険な種類はいるの? 大型のサメとか、毒のある奴とか……」
「勿論いるよ。鋭い牙に猛毒、電気に触手……何でもござれだ。ま、気を付ければ平気だよ。こちらが引き際を見極めれば、最悪の事態は避けられる」
うん。僕、生きて帰って来れないかも。
そんな悲惨な想像をしながらも、小さな船は無慈悲に出発してしまった。
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