【1】街

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「ほら動け。船にくらい自分で乗れ」  結局港まで、僕は縛られたまま移動した。  途中警察に声もかけられたけど、シオリが何かを見せたら大人しく引き下がった。ひょっとしたら「ヤバいことに手を出しているんじゃないか」とも思ったが、怖くて聞き出す事が出来ない。大人しく引き摺られるのが一番だ。 「一応聞くけど、本当に『島』に行くんだよね? 」 「当たり前だろ。駆け落ちかと思ったかい? 」  冗談じゃないよ。 「全速力で二時間くらいかな。道は覚えておいて」 「どうやって……僕は海図なんて読めないよ」 「じゃあ覚えろ。必要な時が来るかもしれないだろ」  出来れば一人で往復することが無いことを願いたい。それよりも、僕はこれから行く場所への不安しか感じていなかった。  名前も無い単なる「島」。シオリによれば調査隊の数名が常駐しているらしいが、それだけでは何の安心にもならない。 「大丈夫。生き物はみんないい子だ」 「一応聞くけど、危険な種類はいるの? 大型のサメとか、毒のある奴とか……」 「勿論いるよ。鋭い牙に猛毒、電気に触手……何でもござれだ。ま、気を付ければ平気だよ。こちらが引き際を見極めれば、最悪の事態は避けられる」  うん。僕、生きて帰って来れないかも。  そんな悲惨な想像をしながらも、小さな船は無慈悲に出発してしまった。
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