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思い返せばどれも素晴らしい日々だった。君が居なくなったあの日ですら、今となっては大切な思い出だと言える。
波の騒めき、風の囁き、生き物達の声。今でも鮮やかに蘇る。
空では鳥達が翼をはためかせ、草の影からは獣達の息遣いが聞こえる。濁った川の底には巨大な魚が潜み、氷の隙間を泳ぐ影が目を光らせている。
そこは命に満ちた世界。何よりも豊かな世界。そして僕が生きた世界。
再び戻って来た今も感じる。昔と変わらない匂いと命の脈動。自由と少しの緊張が作る空気を。
そして昔と同じ。いや、更に大きな危機。
僕達の過去を嘲笑うかのような強大な存在が今、確かに存在して居る。
役に立つかは分からない。全く敵わないかもしれない。戦おうと思うことすら無駄なのかもしれない。
それでも知って欲しかった。この場所で昔何があったのか。僕達がどう戦ったのか。何を助け、何を守り、何を犠牲にしたのか。
そして考えて欲しいんだ。君がこれから何をして、誰を救いたいのかを。
さて、そろそろ始めようか。
始まりはそうだな。二十年前の夏の、あの……
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