忘れられた20年

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忘れられた20年

現在、高齢ハムスターと暮らしている。 ある日突然の大出血(と言っても人間からしたら指を切り血がたれた程度)。 以前から、卵巣嚢腫の病気があり高齢もたたり様子見だったのに、可愛い我がハムスターを持った瞬間の大出血だった。 「きゃああ!救急車呼んでええ!」とハムスターが叫ぶはずもなく、日本の救急車は人間用(どこの国でもそうだろ普通) 近くのかかりつけの動物病院は定休日。 出血が少し止まりかけた時、苦しそうなハムスターを移動用のかごに入れて20年前にフェレットでお世話になっていた少し遠くの動物病院へ。 20年も経過すると悲しい事に建物は自宅つきのご立派な病院に。開設したばかりの頃は低姿勢だった院長は、スクルージに否、傲慢に。 「出血が多くて!明日、近くの病院に行くまでに止血止めだけでも」と必死な私を冷たく見たおっさんスクルージ院長は言った。 「血は多く見えるからね!ハムスターだったらボランティアで2万で手術しますよ、あはは!」 ボランティアは無料だろ。そもそも命を扱う人間が何をほざく。 頭にきた。撫でくりまわされて疲れきった我が愛しいハムスターを静かにかごに入れて、私は反撃に出た。 「20年前にフェレットの女の子の副腎の手術で20万でお世話になりました〜♪その時は院長先生もお若くて、誠実で、動物一匹に時間をかけてくださりましたねえ〜♪ありがとうございました〜♪」 さすがのスクルージに変化した院長もおののいた。 「ああ、あの時のフェレットね、え〜っと」 「サラです♪」 「そうそう、サラちゃん、可愛いかったね!お大事にね、ハムスターも!」 ハムスターもかよ。ネズミとは細かく分けると分類すら動物として違うんだよ。憤りを通りすぎて冷めた私は明日に備えて帰る事にした。 お代、2500円。 動物病院を出た瞬間、私は心で叫んだ。 フェレットの名前はサラじゃねええ!テトだよ! 人間、金と時間でスクルージになる事を学んだ日だった。 ちなみにこのお話、動物の名前以外はノンフィクションです。
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