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溢れている  ああ 光が 近く見える低いあの家の屋根の向こう 遠く建つ四角を積んだ だんだんの後ろから 光が ああ 溢れている この街はこんなだったか 今日の午後の四時の雲 空を埋めるようにつぶらつぶら その真ん中で太陽が光るものだから 雲の縁取りは銀 雲の中身はもう灰 光が ああ 溢れている この目の前の平面の全てに広がって ああ 目がくらむ 遠く帰る女子の細くまっすぐな脚  その下でアスファルトが 濡れている 光のせいだ ああ この道はこんなだったか 曲がり角 ふい 踏み込んだその先にあるのは影 冷たい 影 全部 光のせいだ 雪を待つ午後の あの光のせいだ
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