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そしてとうとう寿退社する日がやってきた。
「皆さん、今までお世話になりました!」
そう言って私は勢い良く頭を下げた。頭上には拍手と同僚たちの声で溢れかえっていた。
お別れ会は大いに盛り上がった。
そろそろ帰ろうと思ったときナナに呼び止められた。
「先輩待ってください!」
「ん?ナナどうしたの?」
ナナが何かを抱えてこっちに小走りで走ってくる。ナナが抱えている何かをよく見てみるとそれは十本ほどの黒薔薇だった。
「これ渡したくて!」
少し息切れを起こしているナナが私に黒薔薇を受け取ってもらおうと腕を伸ばした。
私は内心焦っていた。
あれ?黒薔薇って不吉な言葉しかなかったような⋯私ナナに何かしたっけ?
だがせっかく用意してくれたものを受け取らないわけにはいかず、私はお礼を言いながら薔薇を受け取った。
「あ、ありがとう⋯じゃあ、私帰るね」
「はい!またどこかで会いましょうね!」
私は小さく手を振って踵を返した。
エレベーターの中この薔薇どうしようと思って薔薇を見ていると手紙が入っていることに気づいた。手紙を手に取り読んでみる。
先輩へ
黒薔薇の花束を渡すとき意味を誤解しないようにするために手紙を書くのが普通らしいので書きますね!
私が黒薔薇に乗せて送った意味は『永遠の死』です。
あ、別に先輩に死んでほしいって意味じゃありませんよ?
死というのはこことは別の世界、新たな世界だと私は考えているんです。
だから『永遠の死』=『元には戻らず新たな世界で暮らしてほしい』という意味です。
つまり旦那さんと末永く仲良くしてください!
p.s.意味がうまく伝わっていると良いな
後輩のナナより
「⋯直接いえば良いのに」
でもその時、確かに私の胸は何か温かいものに包まれるのを感じた。
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