1.どうしてこうなった。

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* 走り、走り、走り…、高速で流れていく風景を睨み ながらひたすら走る。 曲がり角だと万が一人にぶつかった時、危険極まりないのでスピードを落とし、そしてまた走る。 だが、 その気遣いを無視するが如く"それ"は現れた。 視界に見える大きな黒いアセチルたわし。 え。と思った途端オレはそれとぶつかった。 ーーーードンッ‼︎ 正面衝突。 そう言うのがしっくり来るだろう。 「わ⁉︎」 「って…」 衝撃によってオレはコンクリートへと投げ出され、なんとか受け身を取った。 あっぶねえええ… だが、受け身を取れなかったたわしは顔面を打ったようであった。 ザマァアア‼︎廊下は走っちゃいけないんだぞぉ‼︎ だが、このまま黙って立ち去るわけには行かない。 一言くらい文句を言わねば我慢ならん。 よってオレはその場に立ち上がって、たわしを見下 すような目をしたが、思わず固まってしまった。 そこにはかつらと変な黒縁メガネがふっとんで頭 をイテテ…と抑える女…いや男かコイツ。 まあそれがいたからだ。 金髪、碧眼、日本人…?なのか? …見るからに金持ちそうな奴だ。 変に訴えられたらこっちが大変そうだし、ここは態 度を改めておこう。 「大丈夫ですか?」 オレは限界までにこの美しい顔を利用して、優しく 微笑んで手を差し出した。 これは紳士の行為でオレには全く合わないのだが、 まあ仕方ないだろう。我慢だ。 「あ…ああ。こっちこそごめん…。」 流暢な日本語。どうやら日本人らしい。 「いえ、それよりお怪我は?」 「無いと…思う…。…いてっ」 あるじゃんか。 むっちゃ膝擦りむいてるじゃんか。 うわぁオレの生活、ここで終わりか? ふとポケットを探すと救いの感触があった。 「これ、よければどうぞ」 「え、これ…」 「その場しのぎですが。」 それ本当は本当の緊急時に使うための絆創膏なん だけどな。お前との絆とか創りたくないけど。 創を絆する膏として使ってくれ。 「では私はこれで。」 爽やかスマイルを浮かべてその場から走り去る。 顔覚えられてなきゃいいな… 二度と会わないことを祈ってオレはその場を後にし た。
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