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授業が始まり、教科書がないから見せてくれやらなんやらかんやらでオレは散々に転校生に絡まれた。
ようやく昼休みのチャイムが鳴った途端、大祥の首根っこを掴んで振り向かせるとその腕を掴んで有無なく教室からスタートダッシュを決める。
転校生がなかまになりたそうにこちらを見ていたが、友達くらい選ばせてほしい。
とにかくオレは腹が減った。
あと面倒ごとはごめんだ。
*〜食堂にて〜
「それにしてももう転校生と面識あったとは…もしや少女漫画の出会い?」
「冗談でも止してくれ。」
食堂でメニューを選んで行列に並びながら、そんな会話をする。
ちなみにオレと大祥は平民枠でここに在学しているので、一番安いAランチか一番お得なBランチ…それか近場のスーパーで買ったおにぎりくらいしか選べないという悲しいパターンである。
長い行列の待ち時間はシェフが有能なためか意外にも短い。だが、流石に大きな貴族たち集う学園であるため数分は待つことになる。
どう時間を潰そうかと考えていると、ふと大祥が何かを考え込んだ姿勢をしていたことに気づいた。
「?どうした?」
「てか、あの転校生、もしや王道か?」
「王道?」
「かつらや黒縁メガネの下、実は美少年で訳ありの変装!学園長の甥か孫説!」
「…設定盛りすぎだろ。でも、変装ってのは本当らしいが…」
「え⁉︎マジか!」
「けど、早とちりするなよ。本当に深刻な事情だったらシャレにならん。」
「宵って…たまに優しいよな…包容力ツンデレ…」
「なにを勘違いしてるか知らんが、人を使って妄想はやめてもらおうか、腐男子。」
…大祥の唯一の欠点というか、理解に苦しむところ、それはコイツが"腐っている"ことだ。ゾンビとかの"腐る"じゃない。
弟から聞いた話、男同志の恋愛ごとに興奮する奴だという。
"見る専門!"というだけでノンケだとコイツは言っているが、それはともかく。妄想にオレを使うのは本気で勘弁してほしい。
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