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〜〜
涼風がそよそよと流れる窓の外。
小鳥のさえずり。
ああ…なんて静かなんだ…。
ここぞ第二のオアシス…。
北校舎の5階、音楽室。
ここなら誰もこないだろう、と一息ついてピアノの前にある椅子に座る。
階段を登るのに大変苦労したが、その甲斐あって誰もいない静かな教室を独り占めすることができた。
「…ふぅ……」
さぁて何して時間潰そうっかな〜!
周りへの警戒を怠らずに弾けるはずもないピアノの鍵盤部分をなぞる。
(そういえばしばらく此処には来ていなかったな…)
オレは、一応、声楽の特待生として入学して来た身である。
つっても家族に半ば無理やり入学させられてきて、しかも志望校を全て白紙に戻されての急展開。
色々あって自暴自棄になっていたあの頃、オレは特に何も考えずにここに入学してきたのだ。
窓の外側を眺める。
校庭はやけに静かだ。
まばらに逃げ惑う生徒。
恐らく人気者に集まっている塊。
それを含めても20人と居ないだろう。
なんだか、逃げ惑っている奴らを見ていると愉快になってきたなぁ〜!
鼻歌混じりに、最近弟に勧められたアニソンを口ずさむ。
はっきり言って歌とかコツとか知らねえし、ピアノも片手でドレミくらいしか弾けない程に音楽知識が全くないオレを、何故特待生として選んだのか全くもって疑問だ。
あー…それにしても楽…
——ガタンッ‼︎
「っヒョっ⁉︎」
突然、隣の楽器置場から音がして変な声をあげてしまう。
ま、まさか…誰か…居る…⁉︎
油断した!鼻歌とか歌ってる場合じゃねえ‼︎
なんとか撤退を試みようとするも身体が動かない。
情けないことにびっくりしすぎたらしい。
ど、どうか知らない奴で、かつ羊でありますように……!
だが、オレは出てきた人物に拍子抜けしてしまう。
そこにいたのは、
明らかに小学生くらいの子供だった。
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