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「…天使さまって…お母さまみたい…」
「はい?」
「あの…僕、小さいころお母さまを亡くしてて…」
突然の激重シリアス。
つーか今でも十分小さいだろ。
「それで…今はお兄さまのお母さまがお母さまなんですけど…天使さまは…ぼくのほんとのお母さまみたいだなって…」
いやいや待て。
勝手に母親み感じてんじゃねえ!
オレみたいな母親なんてロクなもんじゃねえぞ…
比較されるお母様が可哀想になるからやめろ!
「…なんでそう思ったんだ?」
「えっと…優しくて…僕と遊んでくれて…いい匂いして…」
優しいのは気のせいだ。
遊んでくれたってのは成り行きだ。
いい匂い……ってのは、多分洗剤の匂いだろ。
…にしても家庭事情重いのなぁ…、まあ少しでも甘えられてんならいいか。
「まあ、オレに特に言えることはないけどよ。
…また遊ぼうぜ。今度はちゃんと、さ。」
くしゃっと頭を撫でるとちびっ子は少し不満そうに頬を膨らませる。
「子どもあつかいしないでください…」
「はいはい。」
「はい、はいっかいです!」
「わかったわかった。じゃあ、とりあえず気をつけて帰るんだぞ。帰り方は分かるな?」
「はい!ありがとうございました!天使さま…じゃなくて…たなかさん!」
本当はちゃんと最後までついて行ってやった方がいいんだろうが、きっと大丈夫だろう。
それにカイチョーと鉢合わせするかもしれないし。
教室から出てちびっ子に手を振るとオレは北校舎の5階へとまた帰るべく歩き出した。
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