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*大祥視点*
ざわつく会場。
「田中…?」
「田中って誰…?」の声が飛び交う。
「えぇ…なんかスゲーことになったな。会長弟さん居たんだな!ここから恋が始まったりして……?」
お前、安定だな…。とツッコミを待ってみる。
だが隣からはツッコミは返ってこない。
それどころか沈黙して俯いて、どこか焦ったような顔をしている親友がいる。
「…。」
「…宵……?」
「……。」
「……まさか…田中くん…?」
「オレ、出雲だぞ?忘れたのか?大祥…」
宵は中々俺の名前を呼んでくれない。
だから呼ぶときはかなり動揺している時だということを知っている。
「…宵。行っといで。」
あったかい目で見てやるよ…宵…。
「行くわけねぇだろ。
「…田中出雲宵…」
「ミドルネームはねえよ⁉︎オレ純日本人!」
「けど、そうなんだろ?」
「そうなんだろって…!……そう、だけど………」
珍しく、しょももも…と小さくなる宵。
まあ偽名使った時点でバレたくないんだろうな…。
『遠慮するな!誰も貴様のことは責めない!』
会長が中々出てこないのを察して大声でそうマイクに言いつけた。
呼ばれている張本人は「遠慮とかじゃない。本気で嫌だ。」とぶつぶつ言っている。
『田中!…仕方ない……、おい、声楽部と軽音部…その他音楽部の奴ら!集まれ!』
え。何で?
『聞けば、田中は見事な歌声で弟を誑かしたようだ。それほどの歌声ならば聞けば分かるだろう!』
…あれ?宵って…たしか……
尋ねようとして隣を向くと、
俺は固まってしまった。
「…な、に…言ってんだ……あの弟…っ…」
宵は顔を覆って絶望を表現していた。
その耳を真っ赤に染めながら。
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