4725人が本棚に入れています
本棚に追加
*
あの薄情者……後で覚えてろ…。
情けなくも熱くなった顔を仰いで同じ声楽部員の久我山に手を引かれる。
久我山は数少ない声楽部の部員で、普段は全く口を聞く様子なく、ぼっちで行動するのが好きな奴だ。
一匹狼だとか言われてるが、単に人付き合いが苦手なんだろと思う。
「あの、久我山…?手、離してくれません?」
「断る。離せば逃げるだろ。」
「く…」
信用ねぇなぁ…。
まあ、部活に顔出してないオレも悪いんだが。
オレは人前で歌を歌うのが苦手だ。
歌った途端に「マジかよ」みたいな顔されたり変なあだ名つけられるのは嫌だがまだ耐えられる。
だが、だが!
数年前、同級生の女子…初彼女とのデート中、クラスメイトに「おーーい天使の歌声ーー‼︎」と厨二病感満載のクソダサネームをショッピングモールのステージホールで叫ばれたあの事件は記憶に新しい。
あの後イベント会場の舞台にひきずりこまれて歌わされてデート滅茶苦茶にされたんだよな…。
それが原因か分からないけど彼女と別れたし…。
「おい、着いたぞ。」
ぱっと手が離れた感覚に我に帰る。
沢山の生徒がこちらを見ている…。
そこはステージの上だった。
ステージ上には右から左までイケメンですね。
キンキラキンでゴージャスな方々…
はい?オレだけ浮いてる?うん!知ってた。
…で、カイチョーサマは何をなさるおつもりで?
「今からここで歌ってもらう。」
公開処刑ーーーー‼︎
うん、知ってたーー!!
最初のコメントを投稿しよう!