第2話

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第2話

「ん……、ん」  浴室に濡れた音が響く。蒼と凛の舌が絡み合う音が、二人の間で奏でられていた。凛が蒼の首筋に手を伸ばし、指先でうなじを往復する。 「んんっ……り……ら……っ」  ぞくぞくと蒼の首から全身に快感がまとわりつき、たちまち力が抜ける。凛はくちづけを続けながら、バスタブの縁に腰を下ろした自分の膝の上に、蒼を向かい合わせで跨がせた。そして臀部に手を伸ばす。そこからは既に粘液が滲み出ていた。 「んんーっ、あ、や、りん……おれ、おかしくな……ちゃ……」  凛が差し込んだ指を受け入れた蒼の後孔からは、くぷりと愛液が溢れ出す。丹念に中を吟味するように解しながら、指を増やしていく凛。  凛の中心も既に崛起しており、互いのそれが擦れ合い余計に劣情を煽り立てる。 「――すごく熱いね、蒼の中。早く入りたい」  蒼の耳元でうっそりと囁く凛。その胎内は凛を誘い込むように蠢き、指を濡らし、そして締めつけている。 「あ……っ、も……いれてよ……り、ん……がま、んできな……」 「ん、分かった」  凛は片手で蒼の背中を支え、そして空いた手に避妊具の袋を持ち、歯でそれを破り取る。 「蒼、ちょっとだけ我慢してて」  凛が蒼から手を離し準備をしている間、蒼は小刻みに身体を震わせながら耐えていた。 「は……」  早く凛と繋がりたくて、早く挿入(いれ)てほしくてたまらない。後ろが疼いて仕方がない。自分がこんなにセックスに貪婪(どんらん)だったなんて知らなかった。  ほんの数ヶ月前までは「彼女作るより友達とふざけたりゲームやってる方が楽しい」なんて思っていたのに。  愛しい人とこうして睦み合う悦び(こと)を覚えてしまった今、それを知らなかった頃に戻るなんて出来ないと、蒼は改めて思う。それだけ、番との交わりはオメガにとっては避けられない運命であり、本能なのだ。  ある意味麻薬のようなものだとも言える。番え(知っ)てしまえばその誘惑には抗い難く、離れられない。その存在なくしては生きてはいけない。  麻薬と違うのは――一度中毒になってしまうと二度と元には戻れない、ということだ。 (俺ももう、凛がいなきゃ……)  身体を震わせながら、蒼は大きく息をついた。  凛は座っている蒼を再び抱き上げると、今度は逆向きに座らせた。今、蒼は凛に背中を向けて膝に乗っている。 「少し腰浮かせられる?」 「ん……」   蒼が凛の膝を跨いでいる足を床につけて少し腰を上げると、ちょうど後孔が凛の屹立に触れた。すかさず凛は自身を蒼の入り口に宛てがう。 「蒼、そのまま腰下ろして」  蒼は言われるままにゆっくりと座るように腰を下ろす。しかしあまり力が入らず、上手く凛自身を迎えることが出来ない。 「んっ……あぁ……むり……はいらな……」 「痛い?」 「いた、くはない……けど、り、んのおおき、すぎ……っ」  相も変わらず自分のものとは見た目が違いすぎる凛のそれに、蒼は戸惑いながら触れる。 「それって、褒め言葉?」 「っ、ぐ……」  凛が軽く放った言葉にまたしても負けず嫌いが発動したのか、蒼は凛の脚をぎゅっと掴んで下半身に体重をかけた。 「ん、う……んん……」  昼に散々穿たれたそこはまだ柔らかさを湛えていたようで、凛の前戯も手伝って彼の中心を意外にも容易く飲み込んでいった。  自重がかかっているせいか屹立は深く入り込み、形成されてさほど経っていない蒼の子宮口にまで到達していた。 「はぁっ……も、いっちゃ……よ……っ」  途端にふるっと身体を大きく震わせる蒼。全身は既に総毛立っており、快感に蝕まれていることを示している。 「は……蒼の中、気持ちよすぎだよ……ずっと入ってたい」  凛がゆるゆると動き出した。下から軽く突き上げながら前に手を伸ばして蒼自身を握り込み、更には彼のうなじに舌を這わせねっとりと舐め上げる。 「あぁっ! ……っは、っ」  甘い悲鳴を上げたかと思うと、一際大きく体を揺らし蒼は吐精した。 「――気持ちよかった?」 「は……、はぁ、は……、な、なにすん、の、りん……っ、うなじ、なめな……ちょ……あっ、あぁっ」  少し掠れた声で問う凛に、肩で息をする蒼が責めるような言葉を紡ぐ。放ったばかりの中心を握る凛の手は白濁に塗れていたが、それの助けを借りてますます滑らかに動き、蒼を愛撫し続けている。 「嫌だった?」 「んん……ま、って……っ、いったば、か……ひっ」  突然、凛が蒼の子宮口を突き、その身体が大きく反応する。 「まだ大丈夫だよね? 始まったばかりだよ?」  尋ねつつ、凛は蒼を立たせて湯船脇の壁に取りつけられている手すりを掴ませる。そして後ろから細い腰を貫いて律動を再開した。 「あっ、あ、あ……っ、やぁっ、り、んっ、たすけ……っ」  穿たれるたびに蒼の口からは助けを求める声が上がる。しかし本当に助けてほしいわけではないことを知る凛は、尚も突き上げ続ける。 「あ、いしてるよ……蒼……っ」 「はぁっ、ん……、お、おれも……っ、りん、あいし、て……! あぁっ」  背中からひしひしと伝わってくる凛の想いを、蒼は小さな身体で必死に受け止めた。  浴室には肌がぶつかり合う音と、そこから生まれる粘着質な音、それから蒼の嬌声が混じり合い反響している。その和音は蒼の羞恥心をじわじわと刺激し、ますます彼を溶かしてしまう。 「りん……っ、り、ん……! んんっ、あ……も、おれ……うぁっ、あぁっ」  凛の抽挿が激しさを増してから幾度か穿たれた後、ひときわ大きな喘ぎ声を上げ、蒼は再び達した。後孔を突かれただけで吐精したのは初めてだった。 「く……っ、」  そのすぐ後に、凛も欲を吐き出した。
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