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お兄ちゃん
腐った畳。死んだ蝉。滴る汗。暑い息。回る扇風機。
壊れていく心。狂喜の目。鼻につく香り。
裏切られた。涙を流した。否定の声は自分の喘ぎで欠き消される。
ねぇ、お兄ちゃん何をしているの。
僕心配で来たの。
可笑しいね。
さっきまで一緒にご飯食べてたじゃんか。
「あ……ぁあ! 」
「かわいいよ 淫乱で」
ねぇ、どうしてそんなこと言うの。
痛いよ。
体より心が痛い。
「おにちゃ、やめ、」
「やめる? お前みたいなやつ、大嫌いだよ! 」
「っがは、っぐ……」
「はは、お前は赤色も似合うな」
ねぇ、どうしてお兄ちゃん。
僕ねお兄ちゃんのこと知ってたんだ。
僕たちは本当の兄弟じゃないって事。
お兄ちゃんが養子なの。
「っ、、…………」
「寝てんじゃねぇぞ、まだまだこれからだ」
ねぇ、どうして泣いているの。
僕ね。お仕事大変で疲れてるだろうな、ってお兄ちゃんに喜んでもらおうとプレゼント買ってきたんだ。
前にお兄ちゃんとお出掛けしたときに、いいなって見てたブランド物のネクタイ。
ちょっと高かったけどラーメン屋でバイトして貯めたお金で買ったの。
お母さんもお父さんも、これなら喜んでくれるよって……次会うときに渡してあげなって言ってくれたの。
「おに、っ、ちゃ、……」
「うるさい! うるさい! お前が生まれなければ! 俺は……っ、俺は! 」
ねぇ、どうして苦しそうなの。
ほら、お兄ちゃん手が赤いよ。
いっぱいいっぱい赤いよ。
お兄ちゃん痛いんだね。
僕よりずっと、いっぱい痛いんだね。
ごめんね、お兄ちゃんがいるのに生まれてきて。
それでも僕はお兄ちゃんの事大好きだよ。
「──────」
「おい、ふざけてるのか!? ……おい、、おい、何だよ寝たふりしてんなよ。」
「……? おきろよ、おい」
「おきろ、おきろって」
「…………」
end,
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