お兄ちゃん

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

お兄ちゃん

腐った畳。死んだ蝉。滴る汗。暑い息。回る扇風機。 壊れていく心。狂喜の目。鼻につく香り。 裏切られた。涙を流した。否定の声は自分の喘ぎで欠き消される。 ねぇ、お兄ちゃん何をしているの。 僕心配で来たの。 可笑しいね。 さっきまで一緒にご飯食べてたじゃんか。 「あ……ぁあ! 」 「かわいいよ 淫乱で」 ねぇ、どうしてそんなこと言うの。 痛いよ。 体より心が痛い。 「おにちゃ、やめ、」 「やめる? お前みたいなやつ、大嫌いだよ! 」 「っがは、っぐ……」 「はは、お前は赤色も似合うな」 ねぇ、どうしてお兄ちゃん。 僕ねお兄ちゃんのこと知ってたんだ。 僕たちは本当の兄弟じゃないって事。 お兄ちゃんが養子なの。 「っ、、…………」 「寝てんじゃねぇぞ、まだまだこれからだ」 ねぇ、どうして泣いているの。 僕ね。お仕事大変で疲れてるだろうな、ってお兄ちゃんに喜んでもらおうとプレゼント買ってきたんだ。 前にお兄ちゃんとお出掛けしたときに、いいなって見てたブランド物のネクタイ。 ちょっと高かったけどラーメン屋でバイトして貯めたお金で買ったの。 お母さんもお父さんも、これなら喜んでくれるよって……次会うときに渡してあげなって言ってくれたの。 「おに、っ、ちゃ、……」 「うるさい! うるさい! お前が生まれなければ! 俺は……っ、俺は! 」 ねぇ、どうして苦しそうなの。 ほら、お兄ちゃん手が赤いよ。 いっぱいいっぱい赤いよ。 お兄ちゃん痛いんだね。 僕よりずっと、いっぱい痛いんだね。 ごめんね、お兄ちゃんがいるのに生まれてきて。 それでも僕はお兄ちゃんの事大好きだよ。 「──────」 「おい、ふざけてるのか!? ……おい、、おい、何だよ寝たふりしてんなよ。」 「……? おきろよ、おい」 「おきろ、おきろって」 「…………」 end,
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!