雨の日いちゃいちゃ

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 朝6時。ベッド横のサイドボードで、スマホが振動する。カーテンの隙間から、台風の空が覗いている。  英介は顔を枕に押し付けたままスマホを手繰り寄せ、目覚ましを止めようとテキトーに画面をタップした。やっと静かになったスマホを片手に、もう一度寝てしまおうかと布団の中で固まるが、今朝は大事な使命がある。 「…まぶし」  意を決して枕から顔を半分出し、インターネットで天気予報のページを開く。そして、目当ての記事を読み終えると、英介はスマホを放り出した。 「良吾」 「……んー、?」  隣にあった布団の塊を叩くと、ぐるりと寝返りを打って良吾がこちらを向く。寝ぼけ眼に拡げられた腕に、少し躊躇ってから身体を滑り込ませる。後でからかわれたら、寝起きだったと言い訳しよう。 「大雨警報出てた。学校休み」 「おー、マジか。やったなー」  正直、もし学校があったらどうしようかと思っていた。台風で休校になるかを調べるために、無理して6時なんかに起きたのだ。これで学校があったら、ただの早起きだ。  望み通りの幸せに、自然と顔が緩む。調子にのって、良吾の身体に腕を回せば、同じ力で抱き返された。 「あつい…」 「…クーラー点けるか」  幸せも暑さには負ける。寝起きのうちは良かったが、段々身体が温まってくると、いつまでも抱き枕でいる訳にはいかなくなってきた。 「てかこんな暑いのになんで布団被ってんの」 「夏でも冷えんだよ、腕とか腹とか」 「…歳?」 「あ、言ったな」  良吾のムッとした顔が見えたかと思うと、被っていた布団がズルズルと奪われていく。慌てて端を掴もうとするが、なんとも上手くいかない。 「ちょ、なんで、うわ」  あっという間に暖かな空間から弾かれ、出来上がった布団巻の横で唖然とする。布団を剥ごうとすると、渾身の力で抑えられた。  いつもの冗談なのに。  ベッドの上で座り、脇に置いていたリモコンでクーラーを点ける。床に落ちた布団を、脚の上に引っ張り上げた。  薄暗い室内を見回すと、慣れた目に部屋の様子が映った。クローゼットに掛かった良吾の服。棚の部分には、英介の服も積まれている。  雨の音が、部屋を包むようにぼんやりと響く。少しだけ、寂しくなった。 「……良吾」  小さく呼ぶと、布団の下から腕が伸びてくる。その手に自分のものを重ね、身体を横たえる。                          
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