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ソファに並んで呑んでいたら、いつの間にか英介は酔っ払ったらしい。凭れかかってくる身体から、高い体温が伝わってくる。
「おい、グラス」
「……ん」
手から落ちそうなグラスを取り上げ、少し残ったぬるいビールを飲み干す。そこらの高2より体躯は立派だが、酒に関しては人並みのようだ。
テーブルに散らかった空き缶を見て、良吾はぽりぽりと頬を掻いた。仮にも教師が、未成年に酒を呑ますなんて、誰かに見られたら笑い事では済まない。
「ベッド行くか?」
「ふは、ベッドとか……えろーい」
「はぁ?おま、高校生だなぁ」
「高校生ですがー?」
英介は肩からずり落ちて身体を倒すと、良吾の太ももを枕替わりに寝そべった。髪を掻き上げるように頭を撫でると、擽ったそうに笑っている。
「ね、センセ」
「あ?」
「しないの?」
突然の問い掛けに、グッと喉が詰まる。酔いに潤んだ瞳に見上げられるのは、かなり良吾の理性に響いた。
「そういうのはベッドの上で言うもんだ」
平静を装って、笑いながらテレビを消す。
この酔い方なら、眠気が勝つだろうから、このまま寝かせてしまおう。
そんな良吾の目論見をよそに、英介は相変わらず膝の上でだらけている。
「んー……」
「おい、英介。こら」
腹に擦り付けていた英介の頭が、脚の間に移動し始め、良吾は慌ててその顎を掴んだ。
酔うと大胆になるのは嬉しいが、次の日に口を聞いてくれなくなっては困る。
「いつも、して貰ってるから……おれも」
「今日はいいから、もう寝ろ」
「ん、やら」
「英ちゃんよー……」
呆れた良吾にも構わず、触れていた指に英介の熱い舌が這う。両手で手首を掴む姿は幼い子どものようで、しかしやっていることは程遠い。
気休めに親指で唇を押さえると、待ってましたとばかりにしゃぶりつかれた。
「なんで今日はエロモードなんだ?」
口の中でゆっくりと指を動かし、柔らかい舌や頬の内側、歯茎の付け根をなぞる。空いた手でTシャツの裾から白い腹を撫でると、英介はもどかしそうに膝をすり合わせた。
口の中を弄られてイく英介を想像して、良吾は急に身体が熱くなるのを感じた。それは誰にも、気心どころか身体の隅々まで知り合った栄川にさえ言えないような、かなり刺激的な妄想だった。
「良吾……」
そのうち仰向けが辛くなったのか、英介は含んでいた指を離すと、ソファから降りてラグに座り込んだ。良吾のスウェットに手を掛け、強請るような声で名前を呼ぶ。
良吾はいよいよ諦めて、英介の好きにさせることにした。
「しょうがねぇな、ほら」
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