出会い

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「やっぱ、ブンちゃんの授業サボるのはマズかったかなぁ」 本鈴から30分以上過ぎた頃、藤枝は漸く雑誌から顔を上げた。昼休みの後に、教材室で横になったら、うっかり教室に行くのを忘れてしまったのだ。脇に置いていた菓子箱からポッキーを取り出し、口に咥える。 突然、ガラガラと扉が開いた。 「あれ、ホントにいた」 「げっ、ブ……栄川っち。何故ここに……」 「竹田くんが教えてくれたんだ。絶対ここだって」 栄川の言葉を聞いて、藤枝はすぐさま、脳内の英介をビンタした。読んでいた雑誌を放り出して、かび臭いマットに倒れ込む。もわもわとホコリが舞う。 「くそー、英介め!消しゴムの角全部丸くしてやるー」 藤枝は確信した。あの冷たい友人は、栄川との会話が嫌だという理由だけであっさり自分を売ったのだ。栄川だって、それを知ってて英介に聞いたに違いない。 「地味な嫌がらせは、勝手にすれば良いと思うけど。藤枝くんは、何か私に言うことがあるんじゃないかな?」 マットの端に腰を下ろしながら、栄川が尋ねてくる。藤枝は、うつ伏せの状態から、両肘をついて頭を持ち上げた。とりあえず、サボりを謝ろうと口を開くと、ふと頭を掠めた疑問が先に出た。 「栄川っち、なんで俺には敬語じゃないの?」 「んー、必要性を感じなくて」 「え、ひどい!笑顔ですごい酷い!」 2重に受けたショックで、藤枝は再びマットに沈みこんだ。 「俺は1人だ……誰も優しくしてくれない……」 「竹田くんは浅生先生に取られちゃったしね」 「そうなんだよ!リア充に昇進したからって!恋人より親友、あ」 藤枝は、マンガなら青い縦線が入りそうな顔で、恐る恐る栄川を見上げた。先程と変わらない笑顔に、笑おうとした口の端が引きつる。 「えっと……センセ、知ってんの?その」 「竹田くんと良吾が付き合ってること?知ってる知ってる。というか、アレは気付かない方がおかしい」 ダダ漏れだもんね、という言葉に、藤枝は何故か顔が熱くなった。栄川の言い方が、何となく意味ありげに響いた。 「え、っと……サボりは反省文だっけ?」 違う話題を探した結果、自分の首を絞めることになったが、今の話題よりはマシな気がする。 そろそろ身体を起こそうか悩んでいると、目の前にさっきまで読んでいた雑誌が掲げられた。喉の奥で変な音が鳴る。
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