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最近母親になった姉を思い出し、彼女もこんな経験をしたんだろうかと考える。
「俺、リョーゴ好きだよ」
「そういうんじゃなくてさ」
「じゃあどういうの?」
「どういうのって……」
答えに詰まって、伺うように視線を向けると、テレビを見ていたはずのラグがこちらを向いていた。
なんとなく気まずくなり、ソファのほつれを指で弄る。
「別に、天使ってそういうのどうなのかなと、思って……」
言ってしまってから、ズルい言い方をしたと思った。自分を守る為に、相手の弱点に踏み込んだ。
後悔しても、出した言葉は引っ込められない。
「俺のこと信じてくれたら、そんな顔しなくて済むのに。天使の好意は、素直に受け取るものデスヨ?」
「……チョコレートなら受け取る」
「じゃあはい。あとオマケ」
「ンむ、っ……ん」
チョコレートを口に押し込まれ、突然ラグの顔が近付いた。
マシュマロに唇を押し当てたような感触で、甘い香りが鼻をくすぐる。頬に柔らかな羽が触れて、身も心も柔らかなものに包まれる。
「ん、どう?」
「っ……お、まけって感じじゃなかったぞ」
「本気はもっとすごいよ~」
「いっ、いい!もう良い!」
「そんな拒否んなくても、冗談なのに」
「勘弁してくれ……」
ぽんぽんと頭を撫でられ、これではどっちが大人だか分からないと、リョーゴは大きく息を吐いた。
ソファの背に体を預けると、緊張が解けたのかあくびが出る。ラグが膝を抱えたまま、そっと体を寄せてきた。
「明日、どっか行く?」
「ん、スーパー」
「何買うの?」
「ラグが好きそうなもの」
「えーなんだろ、楽しみ」
リョーゴは、赤ちゃんの拳大もある大きなマシュマロに、子どもみたいに目を輝かせるラグを想像しながら、そっと目を閉じた。
(おわり)
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