イチャイチャ(させたい)

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「ラグ」 「なーに」 「これ、面白いか?」 テレビの画面を指して、横の青年に問い掛ける。 上にアンテナの付いた年代物のそれは、だいぶ前に流行った恋愛ドラマの再放送を流していた。 使い古されたありきたりな筋書きで、どのカップルも絶対に別れそうにない所がリョーゴ好みだった。結末を知っている分、尚更安心して見ることが出来る。 「んー、ご飯が美味しそう」 「そうか」 ちらりと、視線を横に逸らす。 リョーゴの横で、テレビに釘付けになっているこの青年は、自分のことを天使だといった。背中から生えた、その場所をとる羽根が本物なことも確認済みで、見たことは無いが空も飛べるらしい。 「なんでまた、こんなもんが俺のとこに……」 昔から、というより産まれた時から信じられないようなことばかり起こっていて、もう少し公平な割り振りをしてくれても良いんじゃないかと思う。 見えるものは信じられる、なんてよく聞くが、信じるかどうかの判断くらい自分でさせて欲しい。 リョーゴは、今しがた幽霊のコスプレに腰を抜かしたところのアイリーンに、心の中でそっと呼び掛けた。 幽霊どころか、悪魔も天使もいるみたいですよ。 「リョーゴ!」 「うわっ、なんだよ。デカい声だして」 「ましゅまろまん、てなに?美味しそうだね!どこで買えるの?」 「あー、あれは食べたらお腹壊すからやめといた方が良い」 「そうなの?それは大変だ」 深刻な顔で頷くラグの頭を、とりあえずよしよしと撫でておく。 食べたこともなければ果たして食べられるのかどうかも分からないが、2人(匹?)を近付けない方が良いことだけは確かだった。 「チョコレート、まだ残ってるか?」 「うん、食べる?」 「ちょっとくれ。眠くなってきた」 「寝れば良いのに」 「いや、アイリーンが花屋のバイトを決めるまで寝れない」 「あ!ネタバレ」 むくれるラグからチョコレートを受け取って、チビチビと歯で齧る。ポットにお湯が湧いて、コーヒーを入れる準備は万端と湯気を上げているのに、立ち上がるのが億劫だった。 祖母の寝巻きみたいな色の安いソファだが、座り心地だけは抜群で気に入っている。 「ラグは好きな奴とかいないのか?」 花束越しにこっそりキスする2人が、画面に映し出される。どこにでも居そうなカップルなのに、イマイチ現実味がない。
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