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そう言ってから、ゆっくりとした動作で扉をノックする。
「……誰だ」
程なくして、中から聞こえたのは、ゲーム内で聴いていたよりもっと威厳がある、重苦しい声だった。
「マオウ様に、逢いたいという者が」
「……来客だと? 珍しいな」
「はい。必ずマオウ様の、野望達成への助けとなる者かと」
かなり無茶振りなんだが、あんなやり取りだけでそこまで読み切ってくれるとか、マオウの右腕、恐るべし……。
「良いだろう。入れ」
「は。畏まりました」
許可を得てようやくの事で、マオウが待つ室内へと足を運ぶ。
こちらに背中を向けているが、本当にゲーム内で言っていた通り、彼はリザードマンのようだ。
シルエットだけで理解る。
しかも、これまで目茶苦茶修羅場を潜ってきたのか、身体中傷痕だらけで、不覚にも格好良いと率直に思ってしまった。
「失礼します」
俺の声に反応して、ゆっくりとリザードマンが振り向く。
「よくきたな、ユウシャよ」
「俺がくる事は、予想済みなのか?」
「私は、最早全て超越した身。分からない事など、ないのだよ」
成る程。
納得。
なら話は早い。そこまで理解しているなら、俺が言いたい事も、全部知れているだろうから、まだるっこしい説明はこの際省くぞ。
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