第一章・―異世界の治安は果たして良いのか―

8/9
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「良いだろう。こい」  何を考えたのか知らないが、取り敢えず戦闘に入る意思はないという事を汲んでくれたようで、半信半疑な表情ながらも、ついてくるように指示される。 「分かった。ありがとう」  今はこいつを信じるしかない訳だから、素直に礼を言ってついて行く。  大体、俺だってレベルが四桁に突入しそうな矢先ではあれど、既に随分前にレベルカンストして、まだ更に高みを目指しているマオウになんて、逆さまになったって敵う訳がない。  そこは重々承知の上で、話にきたんだから、罠にかけようとかでなく、普通に案内してもらえるよな。 「お前、本当にユウシャなのか?」  歩く道すがら、黙ったままなのも手持ち無沙汰なのか、振り返りもせず聞いてきた。 「あ、あぁ。一応は」  そう言って、既に手に入れておいた、伝説の剣である、タイマのケンを見せてやる。  これは、対マオウ用の聖剣で、城に棲むと言われる強敵達にのみ効果を発揮するものだ。  一応、ここにくる前に、問答無用で攻撃されそうになった時のために、探しておいたんだよな。  持ってて良かった、伝説の剣。 「もうすぐ着く。ユウシャよ、くれぐれも、マオウ様に粗相のないようにな」  大層な扉の前で振り返り、そう告げる様は実に威厳がある。  ぶっちゃけオウサマより目茶苦茶威厳がある。 「ありがとう」 「待て。まず、私が開けよう。単身乗り込めば、先程のような誤解をされかねない」  ありがとう。目茶苦茶協力的。これで話も、いくらかスムーズに進むってもんだ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!