残酷な結末

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入ったカフェは予想通り人がおらず、店員はおじいちゃんのマスターのみ。 ゆっくり話をするのに絶好の場所だった。 お昼にしては早い時間だったがメニューに写真が載っていたご飯がすごく美味しそうでここで食べることにした。 オムライスとカルボナーラを頼みいつでも聞けるよ、と由衣くんにアピールする。 「あのね…、」 そう言って話し始めたその話しは裕也も悲しく、そして悔しくもある話だった。 「Ωは大嫌いだって言ってたのに…」 泣いてはいないものの由衣の目は赤くなっていて必死に涙を堪えているのが分かる。 由衣の話しは簡潔に言うと、好きな人と運命の番が出会い高校卒業後そのΩと結婚するかもしれないという話しだった。 裕也たちと同じだ。 由衣の好きな人、そして次期生徒会長のその人はΩ嫌いで有名だ。それでも由衣はその人が大好きで何とか好きになってもらおうと必死に努力してきた。 好きな人からΩのお前は論外だと、あり得ない大嫌いだ、と言われても尚、諦めずその人だけを思ってきた。 その好きな人からの言葉たちに傷つけられる由衣に何度も諦めた方がいいんじゃないか、と言いかけた。 それでも、他人から諦めろと言われて諦められる思いじゃないのはよく知っていたし、裕也だって克也のことを諦めろと言われたからと言って諦められないので言えなかった。 そんな由衣の努力も思いも届かなかったのに運命というのはいとも簡単に一瞬でそれらを飛び越えてしまった。 誰が悪い、とかじゃない。 だからこそ悲しくて、悔しいのだ。 運命の番。 運命の番の裕也と克也。 そして由衣の好きな人とその運命の番。 運命に誰よりも振り回されたのは由衣だ。 一度目は長年決まっていた婚約者を奪われ、今度は好きな人を奪われる。 運命だから克也が好きなんじゃないと、思っていても克也とこうなったのも運命だったからで、結局は結果論でしかない。 裕也と克也が正式に付き合い出した時、由衣に謝ろうとしたことがある。 でも逆の立場から考えてそんな最悪なことはないなと思った。 婚約者を奪ってごめん、なんて言われて嬉しい訳がない。 思い合ってなく、家同士のことだったからと言われても申し訳なさは消えなかった。 それを知ってか知らずか由衣はよく裕也に克也と婚約解消できて良かった。じゃないと、好きな人にも会いに行けなかったからと笑って言う。 本心なのかそうじゃないのか裕也には分からないが、その言葉に何度も心を軽くしてもらった。 なのに、裕也が由衣にしてあげられていることなんて何もない。 こうして話しを聞くことしか出来ないのだ。
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