残酷な結末

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五階から降りてきて二階にきた時、足が重くてギブアップした。 「僕、あそこで休んでる」 「しょうがないなぁ!」 何かの本で読んだ事がある。 女の買い物に付き合うのは本当にしんどいと。 由衣は女じゃないが多分その辺の女の子たちよりも買い物している時間が長いと思う。 決めった店でパッと見て買う裕也とは正反対で初めは楽しかったものの疲れた。 三千円のニットを悩む由衣を普通の男の子みたいだと思ったがそうじゃなかった。 買う量が半端ない上、周りへのプレゼントしたい欲が凄くて自分のものだけに収まらないので由衣の護衛は一人が車まで行ったり来たりを繰り返している。 多分車の中は後部座席が埋まるほど買い物袋が溢れているに違いない。 裕也は慣れない買い物で疲れたが由衣はすごく楽しそうで少しでも気分転換になったようで良かったな、と新しい服を物色する由衣を見る。 今日一日で由衣との距離は劇的に縮まったと思う。 今までお互いに一線引いていたような感じがあったがそれもなくなった。 一緒にいてこんなに楽に過ごせるのは克也の他にいないと思っていた。 由衣とより仲良くなれたことが嬉しくてニヤニヤしているとポケットの携帯が鳴る。 (克也)の文字に慌ててスライドさせる。 「もしもし?」 『楽しんでるか?』 半日しか離れていないのに克也のを聞くだけで会いたくなる。 「うん!すごく楽しい!!疲れたけど」 『ククッ、由衣の買い物に付き合うのは大変だろ?今じゃ誰も行きたがらない』 確かに家でゴロゴロしているだけの裕也はいいが仕事の休みの日にこうなったら大変だろう。 『変わったことはないか?』 「ん?大丈夫だよ」 やっぱり自分と離れて裕也を外に出すのは心配らしい。 大切にされているな、と笑みが溢れる。 『いくら楽しくても俺以外の奴とイチャイチャするのは許せないがな』 やっぱりバレてる、と心臓がヒヤリとする。 「イチャイチャなんてしてない」 『手を繋ぐのは十分イチャイチャしている』 その声からムスッとしている克也が想像できて笑ってしまう。 『笑えるのも今のうちだぞ。帰ってきたらお仕置きしないとな』 「は、はぁ!?」 克也に何かにつけてお仕置きされるがそれはもうしつこくて裕也が何度イっても泣きながら頼んでも辞めてくれない。 『楽しみだな?』 「イチャイチャなんてしてないのに!」 『今日はどれだけ泣いても辞めない』 いつもだろ、と心の中で呟く。 早く克也に会いたいと思っていたのに帰ったらお仕置きが待っていると分かって一気に帰りたくなくなる。 「克也に似合いそうだなって服買ったけど、もうあげない」 『なんでだよ』 それともう一つ、見た瞬間に買おうと決めたものがあった。 文字を彫れるらしく頼んだところ今日の帰りくらいの時間に出来上がると言われたので今は手元にない。 帰ってすぐ渡したいがもうすぐ誕生日だしそれをプレゼントにすることに決めた。 買う直前で重いかも、と悩む裕也の背中を由衣が押してくれた。 喜んでくれるだろうかと不安になるが渡す日が楽しみでもある。 それで言いたい。 「番にしてくれ」って。 ずっとずっと言いたかったけど言えなかった言葉。 誕生日にその言葉を言うのはプレゼントは自分だと言っているようなもので恥ずかしすぎるけど由衣が言っていた克也の一番欲しいものは裕也なんじゃないかと思った。 自分が愛されていると、自惚れているかもしれないけど自信がある。
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