残酷な結末

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「あ、由衣くんが呼んでる」 座っていたところから三軒進んだお店から手巻きしているのが見える。 『そうか。何かあったらすぐ電話しろ』 「護衛の人も沢山いるのに大丈夫だよ」 由衣の護衛四人に裕也の護衛が五人。 それぞれバラバラに由衣と裕也から適度に距離をとってついてきている。 一人は何かあってもすぐに護れるようにすぐそばにいる。 『それでも心配なものは心配なんだ。何があるか分からないからな。俺は近くにいないから守ってやれない』 「フッ、大丈夫だよ。心配しないで!家でドーンと構えてて!」 愛している人に大切にされていることにムズムズする。 『ククッ。裕也、愛してる。早く帰ってこい』 急に告げられた言葉に顔に熱が集まってくるのが分かる。 声が大きい訳でもないので周りに聞かれている訳ないと分かってはいてもキョロキョロしてしまう。 「うん、俺も」 愛している、と続く言葉は本人がいない電話越しで言うの恥ずかしくて帰って言うことにする。 じゃあ、と電話を切り顔を上げるとそこに由衣はいなかった。 試着しているのか?と店の中に入るが由衣だけでなく由衣の一番近くにいた護衛の人もいなくなっていた。 「由衣くん!!」 何故だか嫌な予感がして隣の店まで走って中を見るが見当たらない。 ただごとじゃない裕也の様子に護衛たちが駆け寄ってくる。 「由衣くんが!いない!!」 その言葉に一人は由衣がいなくなった服屋の店員に話しを聞きに、そして主への電話と周りの捜索、そして裕也の護衛に分かれた。 「ねぇ、由衣くんの護衛の人たちは?」 由衣の近くにいた護衛だけでなく全員がいなくなっている。 どう考えてもおかしい。 全員が連れ去られるなんて絶対にあり得ない。 由衣の携帯に何度も電話をかけるが無機質なアナウンスが流れるだけ。 もしかして、と考えたくない考えが頭をよぎる。 「護衛の人が由衣くんを連れ、さった?」 あり得ない、と否定して欲しくて裕也の護衛をしている二人を戸惑いながら見る。 「普通はあり得ませんがこの状況ではそうも言ってられません」 とんでもない事態にどうしようと焦り、手が震える。 するとブッーと登録されていない番号からメッセージを受信する。 このタイミングで誰か分からない人からの通知。 嫌な予感しかせず恐る恐るそれを開ける。 そこには誰にも言うな、というメッセージと共に目隠しをされガムテープで口と腕と足を巻かれている由衣の姿が送られてきていた。 手に力が入らず携帯が滑り落ちカシャンとなる音が遠くに聞こえる。 今にも崩れそうな足に必死に力を入れて深呼吸すると落ちた携帯が地面の上でまたブッーと音を鳴らす。 「何かありましたか?」 裕也の様子がおかしくなったことに気がついたのかそう尋ねられ思わず由衣の写真を見せそうになるが次のメッセージで言葉が詰まった。 『誰かに言えばコイツを殺す』 喉がヒュと鳴り、心配そうにみてくる護衛に何もない、と首を振る。 『護衛を振り切ってひとりでここに来い』というメッセージが送られてきてその下に何処かの地図が貼ってある。 『いいか。お前がバレたらコイツは死ぬぞ』 また送られてきた写真には由衣の首にナイフが突きつけられている。 分かった、とだけ返してどうやってこのそばに居る護衛を振り切るかだけを考える。 一人だけならまだしも二人の須藤グループの護衛に勝てる訳がない。
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