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終わり
(裕也side)
ドーンと構える門の前で気合を入れる。
警備員の一人に声をかけて中に繋いでもらうといつもと変わらない柔らかい声が聞こえてきた。
「裕也くん?どうしたんだい?とりあえず入ってきなさい」
裕也が突然きたことか、それとも克也とではなく一人できたことに驚いてる様子の克也のお父さん。
克也のお父さんがこの時間、家にいるとは思わなかった。
帰ってくるまで待たせてもらうつもりだった。
裕也もまさかここに自分一人でこんな風にやってくる事になるなんて思いもしなかった。
警備員に車に案内され、家の中に向かう。
克也と出会ってからなんだかんだと一緒に行動する事が多くなったからか久しぶりに一人で行動するだけで心臓の音が速くなる。
ずっと一人でやってきたのに慣れとは怖い。
お屋敷と呼びたくなるほどの家につき、中からドアが開かれ克也の父親がで迎えてくれる。
「えっ!ここまで来てくださったんですか!?すみません……」
克也の父親が家にいるからといって暇じゃないことはよく知っている。
克也でさえ、寮にいる時も仕事をしていふのだから須藤家当主が暇なわけがない。
それなのに裕也を玄関まで迎えに来てくれたことが申し訳ないという思いもあるが嬉しかった。
「よく来たね。克也と喧嘩でもしたかい?」
「いえっ!そういう訳ではなくて……お願いがあって……」
玄関でするような話しではないと思ったのか中に入るように促される。
「体調はどう?」
「おかげさまで元気になりました」
それは良かった、と柔らかく笑う様子に裕也の心臓の音も落ち着いてくる。
この前に来た時とは違い、書斎に通される。
「お茶を」
座り心地で高級だとわかるソファーに体重をかける事を躊躇いながらゆっくり腰を下ろすと横から湯気が出ている温かいお茶が置かれる。
お礼を言って裕也の対面に座った克也の父親の方に顔をあげる。
なんと言い出せばいいのか。
しっかり考えてきていたはずなのに言葉が出てこない。
「あ、あの…」
「今日は一緒に夕食を食べないかい?美味しいお肉が手に入ったんだ。克也にも連絡しておくから」
ゆっくりとした口調で全然関係のない話しを持ち出してくれるのは裕也が少しでも楽に話せるようにという優しさだと思うと少しだけ楽になる。
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