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「ぜひご一緒させて下さい」
その答えににっこりと笑う克也の父親を見てこうしているだけじゃ須藤家の当主っぽくはないな、と感じる。
普段はどんな様子なのだろう。
きっと自分に見せている面は本当に珍しい顔なのだと思う。
それから少しの間、学校のこと、寮での克也の様子やなんでもないことを話した。
「僕、初めてです。大人の方とこんなに楽に話せたのは。あっ!楽ってそういう事じゃなくて!なんというか、素直に?自分のことを話したのが、です」
克也の父親はフフッと笑った後分かってると頷いてくれる。
今なら話せそうだ。
「今日ここへはあの時助けていただいたことへのお礼と父親のことを聞きに来ました。改めて、あの時は力を貸して下さってありがとうございました」
ソファから立ち上がり深く頭を下げる裕也に分厚く温かい手のひらが頭を撫でる。
「君が無事で良かった。助けるのが遅くなってしまって本当にすまない」
今度は克也の父親が頭を下げてしまう。
「頭を上げて下さい!!」
「及川との家の事、そして父親の事、事件が世間に出されないようにしたりと本当に助けて頂きました」
「そう言って貰えて良かったよ。これで克也から離れる!なんて言われるときっと克也は生きていけない」
克也と離れて生きていけないのは裕也の方だ。
あんな事を起こして及川家の由衣にまで危害を加えた人間と血が繋がっている自分をまだこうして受け入れてくれるなんて思ってもみなかった。
「それで、父親の事は何が聞きたいんだい?」
裕也を探るように見るその目を真っ直ぐに見つめ返す。
「今どこにいるのか……後あの男と話しをさせて欲しいです」
二人の間に沈黙が続き、その間も裕也はその目を逸らさなかった。
「ふぅ。もう決めてしまっているみたいだ。克也には言わなくていいのかい?」
これは裕也の問題であり一人で立ち向かわないといけないような気がするのだ。
克也が側にいれば何も怖くはないがそれでは意味がない。
「はい。お願いします」
長い間逃げ続けていた問題に一人で立ち向かうのは正直すごく怖い。
でもこれから先、克也の側にいたいから絶対に逃げない。
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