決着

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学校を出た裕也を待っていたのは知らない男だったがその人の風貌があまりにも一般人とはかけ離れていてたので克也から少しだけ聞いた佩名組の人だろうと想像がつく。 学校から車で二時間、山の中に入っていき車一台がギリギリ通れる道を進んだところにあったのは周りを森で囲んだ大きな建物だった。 山の下からは一切見えず、建物名や道案内の看板などもない。 入り口は人一人が普通に通れるくらいのドアが一つあるだけ。 この中に何があるか分からないが普通ではないことだけがはっきり分かる。 中に案内されるが建物の中もまた、普通ではない。 そんな施設に収容されているのはどんな人たちなのだろうか。 「刑務所みたいな…?」 思わず声が出てしまうとここにくるまで一言も話さなかった案内人が振り返る。 「そんないいもんじゃないですよ。ここはただ人間をしまっておく場所です」 裕也は刑務所の中のことは詳しくないので閉じ込めておくという意味で同じようなことではないのか、と疑問に思うのが顔に出る。 「刑務所はまぁ、矯正施設でもあるし仕事もできるし自由時間もあります。塀の中といえど外に出してもらえますし。ここはそういうのはありません。時間も分からず空も見えないような何もない場所に閉じ込めるだけです」 確かに。 暇な時の方が時間が過ぎるのも長い。 時間がなかなか過ぎず、他人とも全く会わないとなれば自分の嫌な沼にズブズブと沈んでいくだけだ。 夜寝る前に自己嫌悪に陥るように、そういう時間を永遠と過ごすのは結構な苦痛だろう。 「それはしんどいですね、」 そういう場所に裕也の父はいるのだ。 色々あったとはいえ、自分がきっかけでここに来ることになったことには違いない。 そのことを申し訳ない、と思うほど裕也はいい子でもないが。 つきました、とドアを開けられた先には学校の教室くらいの広さの部屋。 違うのは机や黒板は勿論、窓もないということだろう。 一つだけ椅子がポツンと置いてあるだけだ。 「ようこそ。如月裕也くん」  部屋の異常さに呆気に取られていると入ってきたドアの方から声がかかる。 中性的で綺麗な顔をしているのに高い身長と圧倒的なオーラ、この人はきっとαだろう。 そして多分、佩名組で一番偉い人。 克也から聞いていたのとぴったりイメージが当てはまる。 「こんにちは。佩名椿さん。色々と手を貸して頂いたようでありがとうございました」 克也以外のαは苦手だ。 この人が自分の敵じゃないとしても植え付けられたものから自然と警戒してしまう。 自分の名前を裕也が知っていることに驚いたのか、その後にああ、克也くんか。と呟く。 「仕事だからね。でもここにいるのは仕事じゃないよ。君に対する興味からだ。あの須藤グループ、次期当主の番がどんな子か、気になってね」 裕也を上から下まで値踏みするようにじっくり見た後にニコリと笑う。 「合格でしたか?」 「それは、まだなんとも。でも嫌いじゃないかなぁ」 取り敢えずの合格点は貰えたようだ。 ただ気になる、くらいの軽いものじゃないだろう。 克也を見て、そして番である裕也を見てこれから仕事で付き合う価値があるかどうか見定めているに違いない。 蟻も殺さないような顔をして怖い人だ。 「それで、」 切り替えたように裕也が言うと椿が頷き誰かに合図した。 「これでもう少ししたらここに来るよ。君のお父さんがね。この件に手を貸したからには最後までしっかり見させてもらうよ」
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