ある三つの視点

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 それから彼女との生活が始まると、日々は慌ただしく過ぎていった。毎日彼女は光る箱の前に座ってにらめっこしていた。時々外に出かけて夜遅くに帰ってくることもあったが、だいたいは家にいた。わたしは日がな一日窓の外を眺めたり、たまに光る箱の前に座ってみたりした。その度に彼女はわたしを困った顔で避けようとするのだが、諦めたように頭を撫でたりしてくれた。ときどき変な匂いのする水を飲んだ彼女がわたしを抱きしめていた。彼女から変な匂いがしてわたしは一応嫌がってみせるのだが、内心ではそれを心地よく感じていた。わたしが感じたことのない温もりというものだろうか、誰かに触れられるのは嫌ではなかった。  ある時わたしがいつものように窓の外を眺めていると、いつも家にいるときは箱の前にいるはずの彼女も一緒に眺めていた。彼女はなにを見てるのか? とたずねてきたが、なにを見ているのかと聞かれても外を眺めているとしか答えられず、問いかけに困った。  その日は朝から雨が降っていた。雨を見るとあのビル群の中にいた頃のことを思い出す。けっして嫌な思い出ではないが、あの頃のことを思うと少しだけ寂しさを感じる。ふと、雨の中に不思議な色がまじっていることに気づいた。キラキラとした光の中に浮かんだ色。それはわたしが初めて見るものだった。そっと手を伸ばしてみる。窓に触れた。彼女が笑っていた。あれは虹だと教えてくれた。虹とは雨に光が当たると浮かび上がるものだということらしいが、途中から眠たくなって眠ってしまった。でも初めて見た虹はとてもきれいだった。
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