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時間が過ぎていき、ある日また彼女が見たこともない豪華なご飯を用意してくれた。今日はわたしの誕生日でもなんでもないのに? と不思議に思っていたら、どうやら彼女の描いた絵が賞をとったらしい。今日はそのお祝いだそうだ。その絵は一匹の猫が三つの場所の中にいて窓のそばで佇んでいたり、暗い闇の中を歩く姿が描かれていた。あと一つはなんだろう、そう思っていると、これは貴女と行ってみたい場所だよと教えてくれた。
これはわたしと彼女の記憶だ。
彼女は言った。これは貴女と出会ったから描くことが出来たものだと。貴女と出会わなかったらこんな風景には出会えなかった。ありがとう、と。
そうか。こんなわたしにも生まれた意味があったのか。誰かから必要とされているだけでわたしはいてもいいのだと思った。
水面に映る自分の顔を見つめていると彼女がわたしを抱え上げた。そしていつも「どうしたの?」と聞くのだ。
ここに来れてよかったね。彼女が言う。
きっと家に戻ったらまた忙しくなるのだろう。わたしはそれを傍で見ている。尻尾をパタパタさせながらたまにパソコンの前で邪魔をする。それでいいんだ。
また来ようね。その言葉にわたしは「ニャア」と返事するのだった。
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