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「ケチ!!減るもんでもないからいーじゃない!」
「言わない!喋らない!」
「まぁまぁ。笑子ちゃん、そこはいいじゃない」
「何言ってるんですか、中野さん!そこが一番聞きたいとこなのに!」
二人にカクテルを作りながら中野が軽く笑う。
「まあ、あいつがどんな風に愛を囁くのかは聞いてみたい気はするけどね」
「ほら!」
「でもロマンチックではないことはわかる」
充分ロマンチックだった。
そう言いかけた董子は慌てて口を閉じる。
あの佐古は自分だけの物なのだ。
生涯自分だけの物のまま。
「あ、そういえば一緒に暮らすんでしょ?佐古から良い物件あったら連絡くれって」
「え、そうなの!?なんなの〜私には何にも話してくれないの!?」
もう中野に話していたのか。
一気に色々あったせいで連絡する余裕がなかっただけで、笑子に隠しておこうとした訳ではないのだが、崩れ落ちそうなほど落胆する笑子を前に頭を下げるしか出来ない。
「あの、本気だったんだなって私も今思ってる次第で……黙っておこうとか思ってた訳じゃないけど、ごめん…」
「董子、大事にされてるんだね、良かった…」
「う、うん…」
比較できる物も経験もない董子は大事にされているのかどうかはわからない。
こんなものだと言われればそうなのかと思うし、頻繁だと言われればそうなのかと思うだろう。
見た目よりマメなのか、佐古からの連絡は頻繁だ。
朝のおはようから昼休憩のランチの写メ、仕事が終われば車の時計の写メが届き、帰るとラインが来る。
帰ったら帰ったで、飯を食えだの風呂に入れだの早く寝ろだの、いくつものLineがはいってきていた。
それを話すと中野が噴き出した。
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