13941人が本棚に入れています
本棚に追加
/370ページ
佐古と中野が何やら話すのを横目で確認し、笑子に隠れるようにしながら携帯を見る。
通知の来ていたラインを開くとメッセージがずらり。
『仕事終わった』
『迎えに行く』
『おい、連絡は』
『迎えに行ってやんねーぞ』
『こら、返事しろ』
メッセージの合間に電話が二回。
ふふと笑った董子の後頭部がこつんと小突かれた。
「見んなつったろ」
「ごめんなさい」
「あー熱っつい!!中野さん、冷房!」
笑子がやけくそのように言うのに中野が笑い、佐古にノンアルコールドリンクを出しながら口を開いた。
「お前が董子ちゃんにメロメロなのはわかるけど、過保護すぎるくらいな訳は話してんのか」
「誰がメロメロだ!」
「メロメロじゃなかったらなんですか……」
しょぼんとしながら口にした董子以外の全員が固まる。中野と笑子からの『答えてあげなさい』の視線を受けた佐古が髪を掻き乱しながら半ばやけくそで答えた。
「メロメロでいーよ!」
「はい!」
「中野さん!かき氷!!」
笑子の叫ぶような声が響いた。
かき氷の代わりに出されたアイスクリームにむしゃぶりつく笑子を他所に、中野に催促された佐古が董子に向き直る。
「誚だよ。また何かやらかしてくるかもしれねーから出来るだけ一人になるな」
「………はい」
「あいつと話しをするまで、な」
「…はい」
よし、といつものように伸ばした手を中野と笑子の視線を感じた佐古が引っ込めかけたが、期待に満ち待つ董子の顔に負け顔を背けながらよしよしと髪を撫でた。
最初のコメントを投稿しよう!