プロローグ

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プロローグ

「お前、本当に可愛がってもらったことないのか」 そう言った声は、これまで聞いたことがないほど甘く、董子(とうこ)の耳にも胸にもじゅわりと染みるように落ちてきた。 落ちてきたのはその言葉だけでなく、その男の唇も指も、そしていつの間にか熱く荒くなった吐息まで。 天敵とすら思ってきた、何とも思ってなかった男の下で董子は、薄い唇から出される熱く滑る舌と知りつくしたかのように動く指に声が枯れるほど喘がされた。 もっと、ううん、せめてもう少し慣れた女だったら、気楽な遊び相手くらいにはなれたかもしれないのに。 董子がそう思うようになるのはまだ先の話し。 遠のく意識の向こうで「俺がずっと可愛がってやる」と、いつもの声が告げたのを聞いたような気がした_________________
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