ープロローグー

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ープロローグー

「もー無理!別れて」 自分でも支離滅裂なことを言っているのはわかってた。 彼氏がいるのに男の子とご飯に行ったのは私だし、告白もきちんと断らないのは私だし、挙げ句の果てに家まで連れてきちゃったのも私だ。 リビングに入ったら彼がいた。週に4回は泊まりに来る彼はさも当然という顔で自分専用のカップでココアを飲みながら勝手に録画したらしいテレビ番組を見ていたけど、私が男を連れて入ってきたって、そのくつろぎ姿勢は崩れなかった。 (さすがマイペース) 動じないのは割と予想の範疇。けど、私はそれが気にくわない。 だから、もー無理!と言いたいのは彼の方なはずなのに、連れてきた男が焦って家を出て行ったあと、私がバッグを放り投げて言ったのだ。 (愁だってさすがにこんな身勝手で最低な女に愛想つかすよね…) ”わかった”と言われて当然なのに土壇場で足が震えたどこまでも自分勝手な私。 「いや」 けど私の彼氏が言ったのはそんな予想外の言葉で。 「華はそんなに俺から離れたいわけ?」 ココアが入ったくまちゃんつきのマグカップをグッと両手で握りしめて、愁は私に詰め寄った。 「いやあの、離れたいとか以前にですね、そもそもこんな状況でなぜ黙ってられるの?」 「え?」 「まさか怒ってらっしゃらない?菩薩、菩薩なの?」 緊張して張り詰めた空気が一転、和やかムードになり、10分後にはすっかり部屋着に着替えた私は愁とお揃いのうさぎちゃんのマグカップにココアを注ぎいれられて、並んでソファに座っていた。 「怒ってないの?」 「怒ったていうか…俺もそろそろ…」 そろそろ?え?やっぱりもしかして潮時ってこと? 冷や汗をかきながら、愁を見つめると、愁も真剣な顔で私を見つめ返した。 「そろそろ本気出すから」 「は?」 「華が盗られないように本気出す。俺、頑張る」 私にはまーーったく意味が分からないけど、彼は言いたいことを言ったようで、うんうんと納得している。 「いや?え?」 「さ、ココア飲んで」 どこまでもマイペースな彼はもう話は終わったとばかりにニコニコとココアを勧めてくるのだった。
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