31人が本棚に入れています
本棚に追加
俺も夕さんも、ユキとは置かれた場所の異なる存在だった。ユキには一緒に暮らす家族がいるし、美味しいご飯を毎日食べられるし、暖かい部屋にいられる。けれど俺達は……。
叶うのならばユキのように暮らしてみたいとも思う。しかしそれは無理なことだ。理由は至極簡単なことで、俺が俺で、夕さんが夕さんだからだ。黒ばかりではなくて青や黄色を纏ってみれば何か変わるかも? なんて、不可能なことを考えるのはこれくらいにしておこう。
ユキのいなくなった窓辺にしばらく佇んでいると、遠くから何かがコツコツと鳴る音が聞こえた。木を叩く音だろうか。
確認しようと耳を澄ますが、不思議な音はもう聞こえなくなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!