参 冬・時雨 三

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 一人残された俺は再びリスの群れへ視線を向ける。リス達は押し合い圧し合いしながら、ひまわりの種を取り合っている。頬袋一杯に貯めこもうとしている者もいるようだ。家まで持ち帰るつもりだろうか。 「ユキー、ごはんー」  隣の家からユキとは違う女の声がした。ユキのお姉さんだ。ご両親と一緒に、家族四人で住んでいる。 「ユキー、お昼ごは……あぁっ! あんたっ、また来てんの! なんなのもうっ! ユキに近づかないでよ!」  お姉さんのそんな叫び声と共に、ばたばたと慌ただしく夕さんが逃げてきた。年頃の乙女に向かって超絶美形の青年が近付いたのだ、お姉さんの焦りは分からなくもない。 「ちょっと、やめてよお姉ちゃん!」 「もう来んな!」  勢いよく窓が閉められる。窓枠に載っていた雪がぱらぱらと落ちた。  夕さんは息を切らして、肩を大きく上下させている。それでも整った顔には涼しさが若干残っていた。さすが美形は違うな。 「夕さん、大丈夫?」 「ええ、なんとか。すごい剣幕でしたね……。やはりお姉様には好かれていないようです」 「あの女には夕さんの格好良さが分からないんだよ。気にすることないって」  夕さんは「ありがとうございます」とは言ったものの、深い溜息をついている。漆黒の瞳が少し潤んでいるようだった。  何か言ってあげたほうがいいのだろうか。しかし、声をかけようと俺が口を開くのとほぼ同時に夕さんは身を翻して走り去ってしまった。 「私は、疎まれ、忌み嫌われ、虐げられる定めなのです」  と、去り際に言い残して――。
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